戦前、オホーツク海で操業する蟹工船では、多くの貧しい人々が過酷な労働を強いられていた。死人すら出る悲惨な労働の背後には、政府、財界、軍部の思惑が見え隠れしている。ついに労働者たちは決起し、ストライキを敢行するが……。29歳で逮捕され拷問で死んだ小林多喜二のプロレタリア文学を代表する傑作。
小林多喜二(1903-1933)1903(明治36)年、秋田県生れ。小樽高商卒。北海道拓殖銀行に就職し、1929(昭和4)年解雇されるまで勤務した。志賀直哉に傾倒してリアリズムを学び、その後、プロレタリア文学に目覚め、労働運動にもかかわる。雑誌「戦旗」に中編が紹介され注目を浴び、「蟹工船」で支持を得る。以後、非合法下の共産党に入党し、左翼文学運動に力を注ぐが、1933年逮捕され、築地署で拷問により殺された。